飛行機の計器の見方②【上昇編】【飛行適性検査対策にも】

パイロットになるには

みなさんこんにちは!エアライン機長のGOROです👨‍✈️

飛行機の計器の見方の場面別のスキャンの仕方をお伝えしていきます。スキャンとは計器を読み取る流れ、順番のことです。慣れないうちは見る順番を決めておくほうがうまくいきます。今回は上昇の場面での効率的なスキャンの方法について解説していきます。

計器の見方の【概要編】はこちらから。各計器も表示する意味も解説しました。

コントロール計器とパフォーマンス計器

【概要編】で一通りの計器についてお話ししましたがそれらの計器は下図のようにコントロール計器とパフォーマンス計器に大別されます。

コントロール計器、パフォーマンス計器の概念図

コントロール計器は姿勢計と推力計です。これはパイロットが直接コントロールできる部分です。操縦桿を動かせば飛行機の姿勢は変わりますし、エンジンレバーを動かせばエンジンのパワーは変わります。パイロットの操作した姿勢、パワーによって高度が変わったり進路が変わったりします。高度や進路は間接的に操作できるもの、姿勢とパワーの結果変化が起こるものというイメージです。そのため高度計や速度計、進路計などはパフォーマンス計器と呼ばれています。

困ったことに、パフォーマンス計器に結果が現れるのは少し時間差があります。訓練などで求められることは高度を変えてくださいであったり、進路を変えてくださいといったりパフォーマンス計器の結果を整えることです。うまく飛行機を飛ばそうと思えば思うほどパフォーマンス計器を見てしまいます。しかし時間差のためパフォーマンスが一見正解でも姿勢がずれていればすぐにパフォーマンスは崩れてしまいます。

従って正しい姿勢とパワーをセットして、あくまでその結果をパフォーマンス計器で確認するのです。パイロットが直接操作できるのは姿勢とパワーのみです。姿勢とパワーをセットして、その結果をパフォーマンス計器で確認して、修正があれば姿勢とパワーにフィードバックをするというのが正しい計器を用いた飛行の方法です。

上昇の時のスキャン

基礎訓練や飛行適性検査では飛行機が水平飛行しているところから「速度、進路を保ったまま500fpmで真っ直ぐ上昇してください」という場面が考えられます。そんな時に見るべき計器のスキャン方法をお伝えします。

上昇するので操縦桿を手前に引いてピッチ(機首)を上げます。するとすぐ飛行機は上昇を始めますが、車で言えば上り坂を登っている状態に相当しますのでそのままだとスピードが落ちてしまいます。従って車のアクセルに相当するエンジン推力を増やす必要があります。よってスラストレバーを奥に少し押し込み速度を維持できるようにします。

この時ピッチやスラストレバーをいたずらに動かすのではなく一度セットして様子を見て、ズレてたら修正してまた様子を見て、また修正して様子を見ての繰り返しの方がいいです。

目安のピッチとパワー(エンジン推力のこと)を知っていたらそれに一度合わせて様子を見て、修正していくのがいいです。ここでの目標である500fpmというのはパフォーマンスの結果であって、500fpmを求めるあまり昇降計ばかり見ているといつまでたっても合わせることはできません。飛行機は姿勢とパワーの結果で全てのパフォーマンスが決定されるからです。

それではスキャンの方法を具体的にみていきます。今から速度100kt、レート(昇降率)500fpmで高度1000ft上昇すると仮定します。

上昇開始〜上昇姿勢に入るまで

まず操作する前に水平飛行している時のピッチとパワーをだいたいでいいので見ておいてください。最後に上昇から水平飛行に戻る時にこの値が使えますので。

水平飛行から上昇に移る時間はざっと3〜5秒くらいのイメージです。この間はコントロール計器である姿勢計とパワーの計器を見るだけでもいいです。

飛行機によって異なりますが、500fpmの上昇ならピッチは2度くらい、パワーは5目盛りくらい増やしてみるといいと思います。ピッチを上げながら同時にパワーを足してください。

姿勢計の中でもピッチは小さいですが最重要なのでよ〜く見ていてください。

訓練時代にいはピッチから目を離したら死ぬと思え!と言われるくらいでした。他の計器を見ている間もピッチは必ず意識していてください!

バンクが入ると(飛行機の傾き)進路がずれるのでバンクも確認しながらです。操縦桿を引く時に傾けて引いてしまうとバンクが入りやすいので姿勢計でバンクをを確認することも重要です。

3〜5秒間、ピッチ、バンク、パワーと心で唱えながら計器のスキャンをするといいと思います。

上昇姿勢ができたら

上昇の姿勢ができたら次はパフォーマンス計器を確認して姿勢とパワーを修正していきます。場合分けしてその時どう対応するかイメージトレーニングしておくといいです。例えば、速度が105kt、レートが300fpmならどう修正するかなどです。

  • スピード大、レート大 → ピッチも高いパワーも多い、ピッチを下げてパワーも絞る。
  • スピード少、レート小 → ピッチもパワーも足りてない、ピッチあげてパワーあげる。
  • スピード大、レート小 → ピッチ低いパワーはおよそOK、ピッチあげる。
  • スピード小、レート大 → ピッチが高いパワーはおよそOK、ピッチを下げる。

大切なのはパフォーマンス計器をみて飛行機のコントロール計器を操作してパフォーマンス計器にまた戻るということです。パフォーマンス計器をみながら操作しているといつまで経っても所望のパフォーマンスを得るのは難しいです。

スキャンの順番は下図のような流れが良いでしょう。高度に関しては500fpmで1000ft上昇するには2分かかるので極論1分半くらいはみなくても大丈夫です。ヘディングもバンクゼロなら大きくずれないのでたまに見て修正するくらいでいいです。

スキャンのイメージ

このスキャンフローに従って、ピッチ、バンク、パワー→スピード、レートの繰り返しを呪文のように唱えながらスキャンしていくと飛行機の動きが落ち着いてくるかと思います。落ち着いてからでいいのでヘディングと高度計もたまに見ていきましょう。

上昇から水平飛行への移行

水平飛行に移ることをレベルオフと言います。あくまで目安ですがレベルオフの操作は大体レートの1/10くらい前から行うといいとされています。つまり500fpmの上昇なら50ft前から操作すればいいということです。

スキャンの方法としては上昇に入る時とほぼ同じです。

上昇前に見た水平飛行の時のピッチとパワーに約50ft手前から戻していきます。ピッチを下げていくのとパワーを絞っていくのは同時にするのがいいでしょう。操縦桿を前(奥)に押すときにバンクが入りやすので姿勢計のバンクもスキャンしてください。

レベルオフできたら、スピード、ヘディングを確認してください。ズレがあったら修正すると教官の印象は良くなるでしょう。高度もちょっとでもズレていたら修正する意欲を見せてください。

よく訓練中は修正意欲を見せろ!と言われました。。。

レベルオフも上昇開始と同じように、3〜5秒間、ピッチ、バンク、パワーと心で唱えながら計器のスキャンをするといいと思います。


どちらかというと基礎訓練向けの内容になってしまったので、採用試験の飛行適性検査を受験される方には難しかったかもしれません。内容全て理解する必要はないですが、でもここに書いたスキャンの順番だけでいいのである程度覚えて練習していくと結果は違うものになるかもしれません。

おすすめの方法は計器の絵をプリントアウトしてそれを見ながらスキャンの練習をイメトレするのがいいと思います。絵を見ながら、ピッチ、バンク、パワーといったふうにするやり方です。パイロットは訓練中は特に紙レーター(シュミレーターを文字ったのでしょう)という紙に印刷した操縦席に向かってそういった練習をしているので是非取り入れてみてください。

最後までありがとうございました👨‍✈️

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