VORアプローチとは?(アプローチ解説その3 VOR編)

用語解説

みんさんこんにちは!エアライン機長のGOROです👨‍✈️

着陸する滑走路へ向けて最終的に接近、降下していく段階をアプローチと言います。エアラインパイロットが行うアプローチはざっと分けると4種類あります。

それはILS、RNAV、VOR、目視による進入の4種類です。

今回はその中でVORについてシェアしていきます。この記事をご覧いただければVOR経路やVORアプローチについてパイロットレベルまで知ることができます👨‍✈️

VORとは?

VORはVHF omni-directional radio rangeの略で、パイロットはブイオーアールとそのまま呼んでいます。何の略か答えれるパイロットはまずいないと思われます(笑)

VORからは電波が出ており、その電波を飛行機側で受信するとそのVORからの方位がわかります。

通常はDME=Distance Measuring Equipmentという設備と一体化されています。このDMEも同様に電波を発射していて飛行機側で受信するとDMEからの距離が分かります。VORにDMEも併設されてる施設をVOR/DME(通称ボルデメ)と呼ぶこともあります。

VOR/DMEの電波を受信できれば、飛行機はVOR/DMEアンテナからの距離と方向がわかり、それによりパイロットは自機の位置を把握することができます。

姿を消してゆくVOR

全国各地にあるVORですが、現在は廃止されていく方向にあります。理由は主に2つあります。

航空路のRNAV化

航空路(=空にある飛行機の道)は昔はほぼ全てVORの電波を受信しその電波の発射される方向に向かい、そのVORに到着したら次のVORに向けて飛行する。というような方法で設計されていました。

VORを結んだ航空路はカクカクしてしまうが、RNAV航空路はまっすぐ設計できる

しかし現在の航空路はRNAVと言って緯度軽度で決まったWaypointを結んで設計されているものにどんどん変更されています。RNAV航空路ですと任意の場所にWaypointを設置できるのでなるべく直線的に航空路が作れますが、VOR航空路だとVORを結んだ経路になるのでどうしてもカクカクとした航空路になってしまうので効率が悪くなってしまうからです。また空港でのアプローチに関してもVORからRNAVへと変更が進んでいます。

ひとつ例を挙げると新千歳空港→羽田空港のルートをVOR航空路からRNAV航空路にすることで13.7km短縮できたようです。また、日本全国で見るとこのRNAV化による燃油費削減の効果は年間で48億円にも上るそうです!

新千歳から羽田までRNAV経路化で13.7kmの短縮!

VORはメンテナンス費がかかる

物理的に地上に電波を発射する大きなアンテナを設置、運営するのには当然費用がかかります。VORが正しい電波を発射しているか飛行機を飛ばしての飛行検査も行われています。航空路やアプローチがRNAVに変更になればそのような費用はかからないのでVORは廃止の流れになっています。

今後のVORの役割

VORは今後も減り続ける傾向ですが、ゼロになることはないと思います。その理由は次の2つです。

RNAV非対応機向け

RNAVアプローチ、航空路は非常に便利ですが地上設備をあまり必要としない分、航空機側での専用の計器とシステムの搭載が必要になります。離島を結ぶコミューター機や小型の軽飛行機には搭載がないことがほとんどですので、そういったユーザーのためにもVORアプローチや航空路は残されるものと思われます。

バックアップとして

RNAVはGPSの位置情報を用いますが、RNAVアプローチに必要な位置情報を得るには6個のGPS衛星からの信号を受信する必要があります。地球の周りには30個程度のGPS衛星がありますが、6個の衛星から信号を受信できないタイミングが生じてしまいます。その時はRNAVアプローチを実施できないので他のアプローチを実施することになり、VORアプローチを行うことがあります。RNAV航空路には求められる精度の違いからこの制限はありません。

RNAVアプローチには6個のGPS衛星からの信号が必要なため実施できない時間がある。

またILSのある滑走路でも、メンテナンスや飛行検査を行なっているタイミングがあり、そんな時はILSアプローチができないので他のアプローチをすることになり、RNAVアプローチがなければVORアプローチを行うことがあります。

羽田空港や成田空港でILSの飛行検査を早朝に行っていることは時々あり、そんな時はVORアプローチを実施したとこがあります。

VORアプローチの仕組み

VORアプローチの仕組みは飛行機の位置をVOR/DMEからの方向と距離がわかるので、その位置に応じた適正な高度を飛行機の高度計で確認しながらアプローチしていくという方法です。例として羽田のVOR 34Lアプローチを紹介します

横方向(水平方向)の飛行方法

下の図はアプローチチャートです。 CACAO→AIDAHと経由し羽田VORに向けて飛行していきます。その磁方位は332°です。しかし34Lの滑走路の磁方位は337°(図の青線)ですので5°のズレ=オフセットがあります。そのズレを背負ったまま滑走路に着陸すると滑走路を真っ直ぐ走れないので、空中のうちにどこかで滑走路と同じ磁方位の337°に飛行機の飛ぶ方向を合わせる=アラインAlignする操作が必要になります。このアライン操作が難しくパイロットの腕の見せ所です!!

HND VOR34L AIPより 筆者加筆

やり方はパイロット次第、天気次第なのですが、主には2つあります。

天気のいい時はAIDAH以降滑走路を視認できていれば、332°のコースから外れて337°のコースに乗っていく方法です。図の緑のアライン①の経路で滑走路延長線上に乗っていく方法です。滑走路まで距離があるのでアラインする時間的、距離的な余裕があります。

もうひとつは雲が低かったり、視程が低い等の悪天時方法です。緑のアライン②の経路です。332°のコースから外れるアライン操作は滑走路を視認してからが前提です。悪天時は滑走路を視認するのが低高度になります。したがって前もって滑走路延長線上にアラインする余裕はありません。

332°のコースをずっと飛行していくと滑走路直前で滑走路延長線上の337°に会合します。そこで337°に乗り換えて着陸する方法です。 会合するのはまさに滑走路直前なのでそこで5°変針して滑走路延長線上を飛ぶのは非常に難易度が高いです。しかも悪天で強風だとさらに難易度は上がります。

このように横方向はアプローチのコースが滑走路とずれていることによる難しさがVORアプローチを難しいものにしています。このHND VOR34Lアプローチではオフセットが5°あります。たった5°と思われるかもしれませんが5°のズレというのは操縦席からはまるで明後日の方向にいるような感覚になるような大きなズレです。

滑走路延長線上にVORを設置してくれれば非常に助かるのですが、、、用地の関係からかそのような空港はあまりありません。

縦方向(垂直方向)の飛行方法

縦方向はRNAVアプローチと同じく飛行機の高度計で確認していきます。

HND VOR34L AIPより 筆者加筆

先程のHND VOR34Lのチャートを見るとCACAOは3000に下線が引いてあるので3000ft以上で通過し、AIDAHは2043ftで通過して以降は3°の角度で降下していきます。

図の赤で囲ったところにVOR/DMEからに距離に応じて高度が表記してあります。

AIDAHは8.2nmで2043ftですが以降の7nm地点を1678ft、6nm地点1359ft、5nm地点1041ftで通過すれば3°の適正な降下角で滑走路に向かえるということです。



最後までお読みいただきありがとうございました。

今回はVORについてのシェアでした。

またのご搭乗お待ちしております👨‍✈️

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