ILSアプローチとは?(アプローチ解説その1 ILS編)

用語解説

みなさんこんにちは!エアライン機長のGOROです👨‍✈️

着陸する滑走路へ向けて最終的に接近降下していく段階をアプローチと言います。エアラインパイロットが行うアプローチはざっと分けると4種類あります。ILS、 RNAV、VOR、ビジュアルアプローチの4種類です。

今回はその中でILSアプローチについてシェアしていきます!

ILSの仕組み

ILSとはInstrument Landing Systemの略で日本語訳では計器着陸用施設といいます。パイロットはそのまま、アイエルエスと呼んでいます。

このILSは滑走路の端から電波を出す施設のことでパイロットはその電波をたどって滑走路に向かいます。

ILSはローカライザーとグライドスロープという二種類の電波が出ています。

ローカライザー

横方向のガイダンスです。飛行機の横方向のズレを知らせてくれます。この電波をしっかりフォローできれば滑走路のまっすぐ延長線上を飛べるようになります。

グライドスロープ

上下方向のガイダンスです。飛行機は3度の角度で降下し着陸します。グライドスロープは滑走路端から3度の角度で発射されている電波でこの電波をしっかりフォローすれば滑走路に向けて正確に3度の角度で進入することができます。

ローカライザーで横方向のズレ、グライドスロープで上下方向のズレを修正しながら着陸する

この横方向と上下方向の2種類の電波を参考に滑走路へと向かっていくのです。

新しいシステムではありませんが、このILSの電波は非常に正確で精密なため、ILSでの着陸が今ある最も精密な進入方式になります。

施設によって多少の差はありますが、視程(見通せる距離)が550m以上ならILSアプローチを実施することができ、ILSアプローチを実施した後は滑走路面から高さ200ft(約60m)までに滑走路や定められたライト類が見えたら着陸することができます。そこで見えなかったらゴーアラウンドすることになります。

高カテゴリーILS

ILSにはカテゴリーというランクがあり、通常のILSはカテゴリー1といいます。カテゴリー2と3もありカテゴリー3では最後まで滑走路等何も見えなくても自動操縦にて着陸することができます

カテゴリー2も自動操縦で着陸することが必須ですが100ft(約30m)までに滑走路等が視認できないと着陸することができません。

そのためローカライザーやグライドスロープの電波の精度やバックアップの要件などがカテゴリーが上がるにつれて厳しく設定されています。

ここまで視程が低いと目視では着陸するのは危険ですので自動操縦で着陸します。実際体験したことがありますが何も見えないし本当にちゃんと着陸してくれるのか恐怖感は少しあります。最後まで何も見えず、計器や着陸の軽い衝撃で着陸したことがわかりホッとします。

カテゴリー1では悪天でも手動で着陸しています。ILSの電波をしっかりフォローすれば雲から出て視界が開けた時、滑走路のまっすぐ延長線上のいい所に飛行機がいるので精度の高さに毎度感心しております。

ILSカテゴリーまとめ

カテゴリー1 高度200ft(約60m)までに滑走路等が見えたら着陸できる。手動着陸。

カテゴリー2 高度100ft(約30m)までに滑走路等が見えたら着陸できる。自動着陸。

カテゴリー3 滑走路等が全く見えなくても着陸できる。自動着陸。

ILSのいいところ、悪いところ

他のタイプのアプローチよりも外が見えない状態でも降りていける高度が低い(=電波の信頼性が高い)ので悪天候でも着陸できる可能性が上がるところがいい点です。

最終的には高度200ft(約60m)で滑走路等が見えれば着陸できます。レインボーブリッジや横浜ベイブリッジの海面から橋げた部分までの高さ(=船が通れるところ)が55m前後ですから、それくらいの高さが地上から見えていたら着陸できるということになります。

レインボーブリッジの橋げた程度の高度までILSの電波のみでアプローチできる。そこで滑走路などが見えなければゴーアラウンドになる。

さらにILSは世界中の空港にも設置されておりパイロットが最も慣れているアプローチの方式ですので操縦の面でも安心感があります

悪い点はILSは高性能なためカテゴリー1でも設置するのに数億円かかると言われています。さらに着陸前に飛行機が直線区間を長くとる必要があるので山など空港周辺の地形的な制約から設置できない場合もあります。この直線区間は少なくとも10km以上は必要ですので場合によっては遠回りになってしまうこともあります。

例えば伊丹空港は北側に山地があるので南向きのRW14サイドにはILSを設置することができません。そのため南風が強く天気が悪い場合には欠航率が高くなります。

伊丹空港を北西方向(RW32)に離陸するANA機。奥に見える山地のためにRW14サイドにはILSを設置できない。

国内の設置状況

基幹空港には滑走路両側にILSがついていることが多いです。交通の要所なので悪天候でも就航率を落とさないようにするためや、建設費をかけれることが理由ではないでしょうか?

しかし地方空港になると滑走路の片側にしかないことが多いです。使用頻度の多い滑走路側についていたり、特定の方向から風が吹くと天気が悪くなる特徴のある空港ではその方向の滑走路にILSを設置しているようです。

例えば釧路空港は南風が吹くと特に夏頃は海霧で視程が悪くなるので滑走路の南向き側(RW17)はカテゴリー3が設置されていますが、北向き側(RW35)にはILSはどのカテゴリーも設置されていません。

釧路は霧が多いため日本のロンドンという別名があるほどに濃霧が立ち込めることが多い。

滑走路両側にILSが設置されていない地方空港もあります。

例えば出雲、南紀白浜、信州松本空港などです。

ILSが設置されていないので欠航率が高いイメージがあります。

カテゴリー2や3はさらに高価なため一部基幹空港や特別に視程が悪い状態が発生しやすい空港に設置されています。

カテゴリー3が設置されているのは、新千歳、釧路、成田、羽田、中部、広島、熊本空港になります。

カテゴリー2、3がある空港でも普段の天気程度であればカテゴリー1で着陸しています。


最後までお読みいただきありがとうございました。今回はILSアプローチについてシェアしました。

またのご搭乗お待ちしております👨‍✈️

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