みさんこんにちは!エアライン機長のGOROです👨✈️
着陸する滑走路へ向けて最終的に接近降下していく段階をアプローチと言います。エアラインパイロットが行うアプローチはざっと分けると4種類あります。ILS、RNAV、VOR、ビジュアルアプローチの4種類です。
今回はその中でRNAVアプローチについてシェアしていきます!
RNAVアプローチのしくみ
RNAVはArea Navigationの略で日本語では広域航法と訳しますが、パイロットは普段RNAV=アールナブと呼んでいます。
RNAVは一つ一つのWaypointを緯度軽度で好きな場所に設定することができます。そのWaypointを滑走路延長線上に設定して、それを結んだ経路上を飛ぶことで滑走路に向けて進入していくという方式がRNAVアプローチです。
飛行機はGPSの電波を主に使って正確に自分の緯度軽度を把握して飛んでいきます。
福岡空港RW16のRNAV APPを例に取ると、下図のように滑走路延長線上にMALTS、AINOS、FF651、FF652などのWaypointを設定し、それを結ぶことで滑走路へと続く進入経路を設定しています。
横方向(平面方向)の経路は緯度経度のwaypointで設定し、縦方向(垂直方向)に関しては飛行機側の高度計で確認しています。
滑走路に向けては一般的には3°の角度で降下していきますので、滑走路からの距離が決まればそこの適正な高度が算出できます。RNAVではWaypointの滑走路からの距離は決まっていますのでそこの高度もアプローチチャートに記載されています。
先程の福岡空港RNAV16アプローチでは、AINOSを1969ft、FF651を1474ft、FF652を933ftで通過すれば、滑走路に向けて適正な3°のパスで降下していることになります。
RNAVの進化版!RNP ARアプローチ!
福岡空港の例ではILSと同じように直線区間が11nm(約20km)程度取られているRNAVアプローチの設定でしたが、最新のRNAVアプローチのRNP AR(アールエヌピーエーアール)アプローチでは直線区間は滑走路手前3km程度で済みます。そして最後の直線以外は曲線での設定が可能になり、さらに経路の設定の自由度が高まりました。
それにより下図の熊本空港のRNAV Y RW25アプローチ(RNP ARでもチャート上はRNAVという表記なのでRNAVとここでは呼んでいます)では阿蘇山の外輪山の隙間を縫うような経路を設定しそれに沿って飛行することを可能にしています。
霧の多い熊本空港ですが、RW25側には阿蘇山の地形の影響から直線区間でのILSやRNAV APPは設定できておらず、西寄りの風で悪天時には欠航率が高かったですが、このRNP ARアプローチの導入で就航率が改善していると思われます。
なおRW07側には濃霧対策で高カテゴリーのILS CAT3アプローチが設定されています。
RNAVアプローチの長所
RNAVアプローチの長所は、緯度軽度でWaypointを任意の場所に設定できるので地形的制約を除けばどんな空港、どんな滑走路にでもアプローチを設定できます。
またRNAVアプローチは地上の設備を必要としないので設置費やメンテナンス費を大幅に軽減することができます。設置に数億円かかると言われているILSアプローチとは大きく異なります。
さらに最新のRNP ARアプローチでは曲線での経路設定も可能ですので、熊本空港の例のように今まで地形的にアプローチの設定が難しかった滑走路にもアプローチを設定できますし、経路短縮に伴い燃料消費量の削減につながり航空会社にも環境にも優しい飛行を可能にします。
このような長所を生かして地方空港のILSの設置されていない滑走路にRNAVアプローチが設定されていることが多いです。また、ILSのメンテナンスや故障した時に備えてILSがある滑走路でもRNAVアプローチが設定されている空港もあります。
RNAVアプローチの短所
いいことづくしのように思えるRNAVアプローチですがいくつか短所もあります。
1つ目はILSよりも低視程に弱いということです。ILSではカテゴリー1でも視程550mあれば実施できますが、RNAVアプローチは諸条件によって異なるのですが視程1500m前後が必要な場合が多いです。また進入を開始した後は、雲などで外が見えない状態でもILSなら200ft(約60m)まで降下できますが、RNAVでは400ft(約120m)程度までしか降りれません。
2つ目は気温の影響を受けるということです。縦方向(垂直方向)の通り道はWaypointの高度で決まっていると言いましたが、その高度は飛行機の高度計での高度を指します。
飛行機の高度計は気圧で測定しているため、気温による影響があります。暖かい空気は膨らみ、冷たい空気は縮むので、暖かい日と冷たい日で高度計の値は同じでも地面からの高さは異なります。暖かい日の方が高く、冷たい日の方が低い位置に飛行機はいることになります。
高度計は地表面からの気圧差を高度に変換して表示しています。その気圧差は空気の重さと考えることができます。空気が暖かいと軽く(密度が低く)なるので、冷たい空気と同じ重さの空気を得るにはより多くの空気が必要になるので、暖かいと地面からの高さは高くなるのです。
そのため非常に低温の日では地面に近づいてしまい危険ですので、RNAVアプローチには実施できる最低温度の限界もアプローチ毎に決められています。
また温度によって滑走路に向かう角度にも差が生まれてしまうので着陸操作も難度が上がります。ILSアプローチでは地上からの電波をフォローしていくので気温による角度の変化はなく、常に同じ角度で着陸操作に入れます。
国内のRNAVアプローチの設定状況
2018年12月の資料とのことですが、国内空港のRNAVアプローチの設定状況です。
非常に多くの地方空港に採用されていることがわかると思います。RNAVアプローチができる前はVORアプローチという進入を実施していたところが多いです。
VORアプローチについては別の記事でシェアしていますが、RNAVアプローチと比較するとパイロット的には難易度が高いですし、低視程にも弱いですし、地上施設の設置とメンテナンスも必要になってきます。そういった理由からも地方空港にどんどんRNAVアプローチは設定されています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回はRNAVアプローチについてシェアしました。では、また👨✈️
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