みなさんこんにちは👨✈️
今回はパイロットが恐れる気象シリーズの第二弾「積乱雲」について空飛ぶオヤジとシェアしていきたいと思います。
積乱雲とは何か??
積乱雲とは強い上昇気流で空高くまで発達した雲です。雲の高さは時に10kmを超えて成層圏まで達することもあります。いわゆる夏に見られる入道雲と思っていただいて問題ありません。
季節は夏に見られることが多いですが、春や秋にも発生します。
積乱雲は悪天のデパートと呼べるほど飛行機にとって危険な気象現象がたくさん含まれているのでパイロットにとって絶対に入りたくない雲となっています。
積乱雲は英語でCumulonimbus cloudと言うそうで、それを略してCBとパイロットの間では読んでいます。
積乱雲/CBのできるワケ
積乱雲はなぜ、どうやってできるのでしょうか??
積乱雲の発達に必要な要素が2つあります。
- 強い上昇気流
- 大気の下層が湿っていること
強い上昇気流
高度10km近くまで雲を発達させるには強い上昇気流が必要です。その役目を果たしているものは、夏であれば日射で加熱された地面、その他の季節であれば前線やシアラインといったもです。
さらに積乱雲がよく発達する場合には上空に寒気が入っている場合がほとんどです。
上空に寒気があると、上層は冷たい空気=重たい、下層は暖かい空気=軽い、といった状態になりますので下層の暖かい=軽い空気が上層に上がりやすい状態になります。
その状態に日射で加熱された地面などによる上昇気流が加わると、積乱雲を発達させるだけの上昇気流が生まれます。
大気の下層が湿っていること
いくら上昇気流があっても雲の原料となる湿度が下層にないと積乱雲は発達しません。
下層の湿度が強い上昇気流に集められて持ち上げられて雲になり、さらに集められて持ち上げられて成長し積乱雲になっていきます。
山地はよく夏場、夕方になると夕立があります。山の表面が日射で温められて周期の空気より暖かくなることで山では昼間に上昇気流が発生します。それが湿った空気を集めて、さらにそれらがぶつかって上昇して上昇気流を作るので積乱雲が発達しやすいのです。
空から見ると山の上だけに雲が湧いてきているのがよくわかります。
積乱雲/CBの危険性
ここからはCBが飛行機に与える影響を見ていきます!
乱気流
CBの内部は上昇気流と下降気流が入り混じった「ぐっちゃぐちゃ」な状態です。もくもくしている雲の形からも想像できるように激しい乱気流がCBの中には渦巻いています。
発達中のCB内部では飛行機の性能を遥かに超えるほどの上昇気流が発生している場合もあり、下手をすると空中分解になりかねないほどのエネルギーがあります。
雷
たいていの発達したCBは雷を伴います。雲の中の雹(ひょう)などが摩擦で帯電するからです。
ぱっと見で雷が発生していないようでもその帯電した雲の中を金属の飛行機が飛べば高い確率で飛行機に向けての雷が発生してしまいます。
飛行機は雷があたっても空中に放電するようになっているので飛行は継続できますし、計器などにも影響は出ないように作られているのですが、着陸後ダメージのチェックなどに時間がかかるので次便のフライトが遅れる可能性は高いです。
また、空港に雷雲が近づくと地上作業中断になります。そのため皆さまの搭乗や降機が一時中断したりする場合もあります。
雹、着氷
CBの中には雹がある場合も多いです。巡航速度などでの高速度でそのエリアに入ってしまうと飛行機には大きなダメージがありますので絶対に避けなければなりません。空港で雹が観測された場合は規定上は雹の程度によって分類されるのですが離着陸を見合わせる可能性が大です。
CB内部には雪もあり飛行中にそのエリアを通れば機体に氷がつきます。これを着氷と呼びます。
氷がついてはマズい箇所は基本的にはヒーティングされているのですが全てをカバーしている訳ではありません。現在の航空機で多少の着氷気象状態で飛行して問題になることは少ないですが、飛行に影響するような強度の着氷があるエリアは避けるべきです。そのためFlapを出して着氷気象状態でのHoldingを禁止している機種もあります。
ダウンバースト/マイクロバースト
これは離着陸時に問題となってくる現象です。CBから降る大粒の雨滴が周囲の空気を引きずり下ろしたり、雨滴の蒸発による冷却で冷やされた空気などの影響でCBから風が吹いてくることがあります。
大雨の前にひんやりした風が吹いてきたことがあるのを体験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?まさしくそれだと思ってもらって大丈夫です。
このCBからの下降気流のことをダウンバーストと言います。マイクロバーストは下降気流の吹き出しの範囲が4km以内のものを言います。風速30m/s程度がよく観測され強いものでは50m/sを超える場合もあるようです。
そのような強烈な下降流が低高度にいる着陸前の航空機に襲い掛かればたちまち墜落の危険性があります。事実、ダウンバーストの現象について発見されていなかった1975年頃にはダウンバーストによる墜落事故がアメリカで相次ぎました。ダウンバーストを最初に解明したのは日本人の気象学者の藤田哲也さんでした。
最近ではドップラーレーダーという気象レーダーのおかげでダウンバーストや危険なCBを検知できるようになりつつあるので以前よりも安全性は向上しています。
積乱雲/CBの危険をどう回避するのか??
ではどうすればCBから飛行機を守れるのか??
実際にパイロットが行なっている方法を紹介します!
巡航中などある程度ルートを変更できる場合
この場合は徹底的に逃げる!これに尽きます。管制官もCBがあって避けたいというのは理解してくれるのでできるだけの協力はしてくれます。
通常CBを避ける場合は風上側に避けるのが定石です。風下側はCBが流されて近づいてきたり、雹が飛ばされてくる可能性があったり、CBにあたった風が乱れた風となって飛行機に当たることで揺れが予想されるから、といったような理由からです。
しかし、自衛隊や米軍の訓練空域があったり、他国との空の国境線があったりして思い通りの方向に避けられない場合は風下に避ける場合もあります。
ルートを変更する場合は管制官にレーダーベクターで飛びたい方向へ飛ぶ許可をもらっています。
空港周辺などルートを変えられない場合
滑走路周辺などどうしてもそこを通らなければいけない場所にCBがあった場合などは離着陸をしばらく待つのが賢明と言えるでしょう。
おおよそ30〜1時間ほどすればCBは移動していき状況は好天することが多いです。ずっと空港の上にCBがいるという状況はまずありません。
待機している間に管制官や自社に問い合わせをしたりしてCBの動向やドップラーレーダーの情報などを収集し、問題ないと判断したら離着陸を再開しています。
今回はパイロットが恐れる積乱雲/CBについてシェアしました!!
では、また!!👨✈️
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