【国内空港】風が強い空港ランキング

航空こぼれ話

みなさんこんにちは!今日は日本の国内空港の強風ランキングをシェアしたいと思います。

私のパイロット経験の中でこの空港は風が強いことが多いな〜と思う空港を独断でランキング形式にて発表してまいります。さらに強風が吹く理由も併せて解説していきます!

それでは風が強い空港BEST3を発表していきます!

風が強い空港ランキング BEST3

第3位

関西国際空港

第3位には関西空港を選びました。

関西空港で問題となる強風は冬に吹く北西の強風です。関西空港でそのような風が吹くときは下図のように冬型の西高東低の気圧配置が強まった時です。下の天気図の日は風速17m/sの風が吹いたようです。風速17m/s以上の熱帯低気圧を台風と呼ぶので、この日は台風並みの強風が関西空港で吹きました。

関西航空地方気象台HPより

西高東低の気圧配置が強い時、瀬戸内海〜大阪湾にかけて強い西風が吹きます。瀬戸内海は中国山地と四国山地に囲まれた管のような役割をするので風が強まります。ビル風の原理と同じです。それがはるばる関西空港まで吹いてきます。手前にある淡路島は標高が低い島なのでそこで風が弱められることはなく関西空港まで吹いてきます。

Google Mapに加筆 瀬戸内海を通り抜ける冬の風

関西空港は06/24の滑走路ですのでこのような冬の北西風はちょうど横風になってしまいます。

Google Mapに加筆 北西風は関空にとっては横風になる

機種や会社によって異なりますが、おおよそジェット旅客機の横風制限は風速15m/s程度と考えてもらって大丈夫です。雨が降って滑走路が濡れていたりするとさらに制限値は厳しくなります。

よって関西空港の冬の北西強風は場合によっては離着陸できなくなるほどの横風になってしまうことがあります。

第2位

羽田空港

第2位は羽田空港を選びました。

羽田空港で強風が吹くパターンには春の発達した低気圧による南西風があげられます。その理由は次のように考えられます。

下図は羽田空港で風速25m/sを超える強風が吹いた日の天気図です。風速25m/sは台風の暴風域と同じ風です。日本海にある発達した低気圧の影響で関東地方は等圧線の間隔が狭くなっています。等圧線が混む=風が強いということになります。

気象庁天気図に加筆

この図の状態では全国的に強風になるのですが、羽田空港ではさらに風が強まる要因があります

それは日本アルプスなどの山岳地域に南西風がぶつかって、風が山岳地域を回り込むときに加速されるからなのです。ビル風の原理と全く同じです。さらに東京湾は南西方向に開けています。東京湾にある羽田空港も南西方向には海しかなく風を遮るものがないので南西風が強くなるのです。

山岳地域でビル風のように加速された南西風は、南西に開けた東京湾に吹き込む

このように羽田空港では日本海を発達した低気圧が進むと非常に強い南西風が吹きます。ただし、羽田空港のB、D滑走路は南西に向かって着陸できるように作られているので、南西強風が吹いても風にほぼ正対して着陸できます。さらに海上から吹く風は気流がそこまで悪いわけではありません。RW22では陸上を経由して風が吹くので多少気流が悪いですが、RW23は海上なので意外に気流は問題ありません。従って羽田空港ではこの南西強風で欠航になったりするケースはあまりありません

Google Mapに加筆. 南西風と着陸方向

冬の北〜北西風も強いけどもこれも滑走路に正対なので欠航になる可能性は低いです

第1位

中部国際空港

第1位は中部国際空港です。

中部国際空港で強風が吹くのは冬に発達した低気圧で西高東低の気圧配置が強まった時です。風速20〜25m/s程度の風が、また都合の悪いことに滑走路に対して横風となる向きから吹くので欠航や遅延になりやすいです。

理由は次の通りです。まず西高東低の気圧配置が強まると北〜北西の季節風が吹きます。日本海から吹いてきた季節風は日本列島にぶつかり、越えていきますが風はなるべく抵抗の少ないところの集まります。日本列島で抵抗=障害=山などを少なく冬の季節風が通過できる場所が若狭湾〜伊勢湾にあたります。日本列島のくびれている部分になり、山はあるものの紀伊山地や中部山岳地帯から見れば低いのでそこが冬の季節風の通り道になっているのです。

冬の季節風の通り道   Google Mapに加筆

冬の季節風の通り道になっているということに加えて、条件が整うと「鈴鹿おろし」が発生しさらに風が強くなります。「おろし」とは強い局地風のことで風が山を越える時に強くなるという現象です。阪神タイガースの歌に出てくることで有名な「六甲おろし」でおろしを聞かれたことがあるのではないでしょうか。日本各地に地形の影響から「おろし」で風が強い場所があり、名前がついています。

鈴鹿山脈から少し距離のある中部国際空港で「鈴鹿おろし」によって風が強まるの仕組みは次の通りです。

まず条件が整うと鈴鹿山脈で「鈴鹿おろし」が発生します。おろし風は山を駆け降りて地面にぶつかると跳ね返るように、波打つように一度空へと上がりその後また地面に降りてきてぶつかります。その地面にぶつかるときに風が強まります。その現象を気象学では「はね水(Hydraulic Jump)」と呼ぶようです。

「鈴鹿おろし」イメージ図  参考文献 地球温暖化と中部国際空港の風 大和田道雄

「鈴鹿おろし」は鈴鹿山脈を駆け降りて、最初に山すそにある津市で強風を吹かせた後にJumpし、次に降りてくるのが中部国際空港のある常滑周辺でそこでもう一度強風を吹かせます。

冬の中部国際空港では季節風の通り道であることに加え、「鈴鹿おろし」の影響もあり日本で1番風が強い空港となっているのです。しかし、風が強くても海から吹いてくる風なので気流自体は悪くなく、横風制限値を下回ってさえいれば離着陸に問題ないことがほとんどです。

風の強い空港BEST3の共通点

BEST3を発表してきましたが、風の強い空港とその理由には共通点がありますが一体それは何でしょうか??

それは海上空港であることと、地形によって風が強化されているということです。

海上はさえぎるものがないので強風が吹きやすいです。ご丁寧に人工島まで作って海上に設置しているのでなおさらです。ただ、海からの風は平らな海面上を吹いてくるので気流自体は悪くないです。逆に山間部にある空港は山などで風がさえぎられるので海上空港ほどの強風は吹きません。でも風が山に当たって乱れた風の流れになるので気流は非常に悪くなりやすいです。どちらが着陸が難しいかといえば山間部にある空港です。

ちなみに対岸と空港島を結ぶ連絡橋にも風速制限があります。おおよその情報ですが関西空港では鉄道が風速30m/sで通行止め、道路は風速20m/sで速度制限がかかります。中部国際空港では鉄道が風速29m/sで通行止め、道路は風速25m/sで通行止めになるようです。過去には飛行機の運航ができても連絡橋が通行止めになり足止めを受けた事例もあるようです

海上空港で強風の場合にはアクセス手段にもご注意ください。

コメント